名演から学ぶ、ジャズアドリブ研究

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"Just Friends" by Lee Morgan(2)

ではリー・モーガンのアドリブを分析してみます。この演奏に関しては動画にトランスクライブ(採譜)したものが無かったので、自分で部分的に採譜してみました。

 

   

 

この曲はFメジャーで演奏されることが多いですが、これはA♭メジャーキーでの演奏です。

 

ギターのエディ・マクファーデンによるテーマメロディと短いソロの後、ジミー・スミスのソロに入り、4:03あたりからモーガンの演奏が始まります。

 

まず出だしの部分です。(4:06~4:12)

 

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このD♭m7はA♭メジャーキーにとっての同主短調A♭マイナーに存在するサブドミナントマイナーで、借用和音と呼ばれるものです。

 

D♭m7上の音は短7度(B♮=C♭)、完全5度(A♭)、短3度(E♮)の3音ですが、A♭M7の1拍目E♭音に対しE→D→E♭と半音上下の音を挟み込むように吹いています。

 

ある一つの音を目標にしてその音の半音上下からアプローチするこの手法は刺繍音などと呼ばれ、フレーズを滑らかにするとても効果的な手法です。ここでのモーガンのように、コードの変わり目に次のコードの構成音を目標にして半音を挟み込むといいでしょう。

 

A♭M7の2小節目の2拍目もこの半音上下で挟み込む形のフレーズですね。D♭(完全4度)→B(短3度)はC(長3度)へ向かう刺繍音とも解釈できます。

 

次にソロ2コーラス目の出だしです。(4:51~4:56)

 

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2小節目のフレーズはマイナーペンタトニックを使ったかなりブルージーなフレーズ。ここの音使いはA♭、B(=C♭)、D♭、Dで、A♭マイナーペンタトニックスケールの1度、短3度、4度、減5度の音になっていますね。

 

前述の通り、D♭m7はA♭メジャーの同主短調A♭マイナーに存在するコードですから、このコード上ではA♭マイナーペンタがばっちりはまります。

 

次にこの曲のブリッジ(サビ)の部分ですが (6:37~6:43)

 

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ここの場面にくると、何度かこんな感じのフレーズが出て来ます。事前に練っておいたフレーズかどうかは分かりませんが、きっとこれを下敷きにして吹いていると思しき場面が少なくありません。

 

1小節目はB♭m7をルートから途中増4度のEを経過して、短7度A♭まで駆け上がります。E♭7ではDから♭9thテンションのEまで半音上がった後、3拍目裏のG音から次のGΦ7のコードトーンを先取りしています。

 

この直後のフレーズですが、(6:43~6:46)

 

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この部分のフレーズは上手く音が取れたか自身がありませんが(>_<)、おそらくこんな感じだろうとは思います。

 

5度ドミナントにあたるE♭7へ向かうダブルドミナントがこのB♭7です。ダブルドミナントはよくリディアン♭7スケールを使うと教則本に書かれていますが、ここでもその特性音である増4度のE♮と短7度のA♭が使われ、さらにそれらの音周辺を半音進行でつないでフレーズを作っています。

 

なによりもこの演奏におけるモーガンの後に引きずるようなアーティキュレーション(表情付け)やタイム感こそジャズを演奏する上で最も大切なものでしょうね。しかしこれが未成年の演奏とは信じられません・・・。

 

       

 

 

 

 

 当ブログの内容や理論面で分からない事、疑問点などがあれば、是非ご質問下さい。

 また音楽理論を本格的に勉強したい方のために理論書を作りましたので、興味のある方は御一考を。

loopin.hatenablog.com

 

 

 

 

"Just Friends" by Lee Morgan(1)

       

 

今回はジャズオルガンの巨匠、ジミー・スミスがブルーノートに残した「ハウス・パーティー」から、トランペットのリー・モーガンのアドリブを分析してみます。

 

いわゆる神童と呼ばれるミュージシャンの中でも、このリー・モーガンは特別な気がします。一般にトランペット等の金管楽器は向き不向きが激しく、必ずしもたくさん練習すれば上手くなるとは限らないといわれています。まず正確な音程を出すのが難しいので、吹く人の個性や味といったものまで表現できるようなレベルになるのが他の楽器よりも遅れるのです。

 

そんなごまかしの効かないトランペットという楽器を、18、9歳という若さでここまで情感豊かに吹きこなすモーガンはまさに「トランペットを吹くために生まれてきた男」といってもいいでしょう。

 

1957年と58年の2回にわたって録音されたこの「ハウス・パーティー」はメンバーが曲ごとに入れ替わる、さながら一大ジャムセッション大会の様相です。総勢10人の参加ミュージシャンはみなジャズ史に残る巨匠ばかり。

 

この中で今も存命なのはケニー・バレル(g)、ルー・ドナルドソン(as)、カーティス・フラー(tb)、ジョージ・コールマン(as)の4人。特にドナルドソンは今年2016年で90歳!を迎えます。

 

対して当時19歳でもちろんメンバー中最年少のモーガンは、1972年に33歳の若さで早々と亡くなっています。

 

治安の悪い地域だったニューヨークのイーストヴィレッジにあるジャズクラブ「スラッグス」に出演中、楽屋で内縁の妻ヘレンに痴情のもつれから射殺されるという、まるでフィルムノワールそのままのような最後でした。(この事件の影響から「スラッグス」は直後に閉店を余儀なくされます。)

 

 クリフォード・ブラウンやブッカー・リトル等、昔から何故かトランペッターは短命な人が多いといわれていますね。かつての日本版エスクワァイア誌にもこの事を考察する内容の記事があったのを思い出します。確か「トランペッター不良論」とかいう特集で、90年代後半のバックナンバーだったと思います。

 

若くして名声を得たモーガンは少し謙虚さに欠け、ひと癖ある性格だったとか。酒と麻薬と女性に溺れる破滅型のジャズマンを地で行く人生から、年上だったヘレンは何とか彼を救いだそうとしたようですが、一瞬の激情から引き金を引いてしまうという最悪の結末で2人の仲は引き裂かれ、モーガンは人生というステージから降りることになりました。

 

ヘレンはその後服役し、出所した後は故郷の南部ノースカロライナ州へ戻り、同地でひっそりと亡くなったそうです。

 

ブルーノートに所属するアーティストの中で最も多くの作品を残し、50年代から60年代にかけてハードバップのアイコンとなったモーガン。1967年のジョン・コルトレーン死去と並んで、1972年の彼の死は時代の一つの区切りともいえるかもしれません。

 

次回そのモーガンがデビュー間もない頃にのこしたスタンダード「ジャスト・フレンズ」を分析して見たいと思います。

 

 

       

音楽理論講座(13)~音楽の「核」 終止形~

コード進行は単純にいえばトニック、ドミナントサブドミナントという3つの集団のどれかに属するコードが、別の集団に属するコードにバトンを渡していくようなもので、それが音楽の起承転結を生みだします。

 

なので延々とトニックコードだけ、ドミナントコードだけが続くというコード進行を持つ音楽はあまりありません。基本的に和音は別の機能和声へ進みたがる指向性を持つのですが、中でもドミナント(D)とサブドミナント(SD)の2つがトニック(T)へ向かう進行をケーデンス、日本語で終止形と呼びます。

 

特にコード構成音にトライトーンを内含するDが、安定感のあるTに進行するケーデンスをドミナントモーション又はドミナントケーデンスといい、ジャズに限らず近代ポピュラー音楽の根幹を成す理論です。

 

Dはトライトーンを有しているため、不安定かつ緊張感のある響きが特徴です。だからこそトライトーンのない安定感のある響きへ進みたい性質を持っています。

 

小中学校での合唱の前にまずピアノに合わせて礼をしますが、頭を下げる時の音がドミナントコードで頭を上げる時の音がトニックコードです。あれもこのドミナントモーションのD→Tというケーデンスを利用したもので、あれが頭を下げるドミナントコードのままで終わると気持ち悪いですよね?やっぱり最後にトニックコードを鳴らしてもらわないと頭を上げられません^^。

 

こういったD(不安定)→T(安定)というドミナントモーションがもたらす解決感、段落感はDのトライトーンがTのコード構成音に半音進行するために生まれます。図で見ると

      

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CメジャーのドミナントコードであるG7、その3度と7度はBとFというトライトーンです。これがCMへ進行すると、BはC(CMの完全1度)に、FはE(CMの長3度)に半音で進行します。

 

コードが進む事によって、コード内の声部進行が半音で上行もしくは下行する、これがコード連結の基本です。ドミナントモーションはこの半音進行がもたらす「トライトーンの解決」によって強い進行感と解決感が生まれるのです。

 

この半音進行というのはとても大事なキーワードですので頭に入れておいてください。

      

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ドミナントモーションという終止形はいわば曲の骨格であり、ここに様々なコードや転調を肉付けして曲はつくられていきます。

 

T→D→Tというトニックがドミナントを経過してまたトニックに戻るドミナントモーションは曲の基本的なフォーマットであり、多くの楽曲は解体して見ると、この進行に集約できたりもします。

 

 

 

 

 

 

 

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