名演から学ぶ、ジャズアドリブ研究

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"Just Friends" by Lee Morgan(1)

       

 

今回はジャズオルガンの巨匠、ジミー・スミスがブルーノートに残した「ハウス・パーティー」から、トランペットのリー・モーガンのアドリブを分析してみます。

 

いわゆる神童と呼ばれるミュージシャンの中でも、このリー・モーガンは特別な気がします。一般にトランペット等の金管楽器は向き不向きが激しく、必ずしもたくさん練習すれば上手くなるとは限らないといわれています。まず正確な音程を出すのが難しいので、吹く人の個性や味といったものまで表現できるようなレベルになるのが他の楽器よりも遅れるのです。

 

そんなごまかしの効かないトランペットという楽器を、18、9歳という若さでここまで情感豊かに吹きこなすモーガンはまさに「トランペットを吹くために生まれてきた男」といってもいいでしょう。

 

1957年と58年の2回にわたって録音されたこの「ハウス・パーティー」はメンバーが曲ごとに入れ替わる、さながら一大ジャムセッション大会の様相です。総勢10人の参加ミュージシャンはみなジャズ史に残る巨匠ばかり。

 

この中で今も存命なのはケニー・バレル(g)、ルー・ドナルドソン(as)、カーティス・フラー(tb)、ジョージ・コールマン(as)の4人。特にドナルドソンは今年2016年で90歳!を迎えます。

 

対して当時19歳でもちろんメンバー中最年少のモーガンは、1972年に33歳の若さで早々と亡くなっています。

 

治安の悪い地域だったニューヨークのイーストヴィレッジにあるジャズクラブ「スラッグス」に出演中、楽屋で内縁の妻ヘレンに痴情のもつれから射殺されるという、まるでフィルムノワールそのままのような最後でした。(この事件の影響から「スラッグス」は直後に閉店を余儀なくされます。)

 

 クリフォード・ブラウンやブッカー・リトル等、昔から何故かトランペッターは短命な人が多いといわれていますね。かつての日本版エスクワァイア誌にもこの事を考察する内容の記事があったのを思い出します。確か「トランペッター不良論」とかいう特集で、90年代後半のバックナンバーだったと思います。

 

若くして名声を得たモーガンは少し謙虚さに欠け、ひと癖ある性格だったとか。酒と麻薬と女性に溺れる破滅型のジャズマンを地で行く人生から、年上だったヘレンは何とか彼を救いだそうとしたようですが、一瞬の激情から引き金を引いてしまうという最悪の結末で2人の仲は引き裂かれ、モーガンは人生というステージから降りることになりました。

 

ヘレンはその後服役し、出所した後は故郷の南部ノースカロライナ州へ戻り、同地でひっそりと亡くなったそうです。

 

ブルーノートに所属するアーティストの中で最も多くの作品を残し、50年代から60年代にかけてハードバップのアイコンとなったモーガン。1967年のジョン・コルトレーン死去と並んで、1972年の彼の死は時代の一つの区切りともいえるかもしれません。

 

次回そのモーガンがデビュー間もない頃にのこしたスタンダード「ジャスト・フレンズ」を分析して見たいと思います。